「タケ、今週の土曜日はサッカーだ!」
と、その週の木曜にある先生に言われた。モロッコの予定はいつも急である。ということで先週の土曜日はタハシン小学校でサッカーをしてきた。なぜ急にサッカーなのか。理由がある。
この日はモロッコ全土で「いつもの授業ではなくて、子どもたちのために各学校で絵を描いたりスポーツをしたり、何かアクティビティをやりましょう。」という日とのこと。日本のように学校行事がないモロッコ、この日は子どもたちのために先生がアクティビティを考えるようだ。この学校は前半図工、後半サッカーという組み合わせらしく、最初は4年生のクラスで図工をした。
この日は、タピを描くことに。
紙にクレヨンで模様を描いて、謎の茶色い液体を塗ると、きれいにクレヨンの色が浮き出てくる。モロッコのクレヨンでもきれいな色が出るこの液体、実はこの日の前々日に教えてもらったものである。去年少しだけお世話になった教員養成学校のアブドゥ先生からのいただきもの。彼の作品集のなかで、茶色い下地にきれいな模様が浮き出ている、一際目を引くきれいなタピがあった。
その茶色が、普通の絵の具ではないことを教えてもらったけれど、それが何なのか去年ははっきりとはわからなかった。そしてずーっと頭のすみで気になっていた謎の液体の正体が、先日ようやくわかった。
話を聞くと「クルミの染料」らしく、こちらでは家具などを塗装するときにニスの下地や色づけのために使用されるとのこと。つい最近までそんな染料があることすら知らなかった。実はモロッコの図工の教科書にも載っていたが、それが何なのか、どこで手に入るのか知っている先生もいなかった。
絵の具とは違い、塗るとやさしく深みのある茶色が紙にのる。塗り方によってできる少しのムラが乾くと、本物のタピのような雰囲気が出る。うれしいことにアブドゥ先生からその原料を少しいただき、この日さっそく使わせてもらった。
クレヨンに重ねてこれを塗ったときに、子どもたちの「お~っ」という声があがり、教えてもらったものだけど、「すごいでしょー。」とうれしそうに紹介させてもらった。
一人一人の作品がみんな違っておもしろい。
そして、きれいなタピができました。
そしてサッカー。
ここウジダに本拠地を置く「モルディアウジダ」(現在モロッコ2部リーグ)のOBの方々が集まり、子どもたちと先生を交えたフットサルの試合が行われた。OBの方々、もうお年は40代、50代、でもやっぱりうまい。足元の技術がしっかりしていて、ミスも少なく安易にとりにいくとスッと抜かれてしまう。動きの中でボールが回り、スペースの使い方もうまい。そして体力の衰えを隠しきれない協力隊、29歳、先月坊主になりました。
試合では、こちらの貴重な走れる戦力である小学生2人が動き回り、何と2点の先制。しかし、そこから向こうのサッカー魂に火がついた、明らかにこの後からチームモルディアの動きが変わる。本当に引退しているのか、というくらいの動きであっという間に3点とられた。こちらのチームには元サッカー選手のカンバスと実はサッカー大好きなノルディーンがおり、そっちもアツくなってきた。もうそこからはガッチガチ。年とか関係なく本気でボールを追い、ぶつかり、楽しんだ。最終的に何点とられて何点とったかは覚えてないけれど、本当におもしろかった。
サッカー中は大人気ない大人たち。
タハシン小学校の先生方。去年引退されたはずなのに、いつも学校に来ているシュノウフィ、「早起きは三文の得だ。」という意味のアラビア語をいつも教えてくれるノルディーン、いつも冗談ばかり言っているアブドゥ、いつもお世話になってます。
小さい頃に父親や兄弟と一緒にボールを蹴るようになり、ずっと続けてきたサッカー。モロッコに来てもサッカーを通していろんなつながりができていて、こっちでサッカーをする度に、自分はサッカーの中で生かされているなぁといつも思う。日本でとてもお世話になったある先生のお父さんのように、年をとっても楽しくボールを蹴っていたい。
先日、相方が活動先でお世話になっているというケリンムさん宅で、クスクスをご馳走になった。
モロッコの伝統料理であるクスクス。時間をかけて、その家庭でしか味わえない絶妙な味付けで野菜とお肉をじっくり煮込み、クスクスは3回も蒸し、ゆっくりと時間をかけて料理される。聞くところによると3時間はかかるとか。そして大の大人が両手で抱えるほどの大きなタジン鍋に、山盛りにクスクスを盛り、あつあつのスープをかけ野菜と鶏肉を盛り付けて、完成!(・・・なんてえらそうに料理の手順なんか書いているけれど、もちろん作ったこともなく、いつもお腹いっぱい食べさせらもらうだけで、ひどいときにはそのまま昼寝までするようになっています。)
冬の晴れた日だからなのか、この日の空はとても青く、気持ちいい天気だった。ちょうどいい広さの庭の隅っこには鶏小屋があり、畑もある。鶏のえさをめあてにやってきた鳩には、ケリンムさんからえさが振舞われる。きれいに手入れされている畑には元気なパセリが育つ。子どもたちも遊べて、緑の多い、なんだかとても気持ちの安らぐ庭だった。そこにあるテーブルに、できあがったクスクスを運んできて、家族揃って「ビスミッラー(いただきます)。」
後からかけるレーズンを使った甘いソースが味のアクセントにちょうどよく、自家菜園で採れたかぼちゃもやさしい味で口の中ですっととろけて本当においしい。モロッコに来て初めて食べたクスクス、食べる度に好きになってきている気がします。
家の中も庭も関係なく元気に走り回るカウチャ(家の廊下でスライディングばかりして「もう一回?」と聞いてもないのにやり続けたり、あつあつのクスクスをつまみ食いしてお母さんに怒られたりと、見ているだけでとにかくかわいくておもしろい。)と遊びながら、あたたかい家族の中で、とても心地よい金曜日を味わいました。
声をかけてくれた相方とケリンムさん家族に、感謝!