「タケ、明日は朝から掃除をするぞ、来れるか?」
タハシン小学校のカンバス先生からこう言われ、翌日の朝から学校に行ってみると、時間ぴったりにカンバスと数名の子どもたちが学校に来ていた。
何をどう掃除するのかと思い、話を聞くと、テラン(日本でいう校庭)のまわりにマラソンコースを作るとのこと。しかし、ここのテランのまわりはゴミでいっぱいである。誰に邪魔をされることもない草たちも、のびのびぐんぐん。「ここか・・・。」と思う自分をよそに、奉仕作業が始まった。
子どもたちはガンガンごみを拾い、石を拾い、自分の背丈ほどある草を抜き、荒れた雑草地帯を開拓していく。道の脇には誰かが捨てていった大量のタイヤを置いていく。靴やTシャツ、タイルにフォークなど、ごみだらけの場所に手が入り、少しずつきれいになっていく。
人の力ってすごい。
あんなに雑草とゴミでいっぱいだった場所に、何もしなければ、きっとずっとあのままだった場所に、少しずつ、道ができた。
集中力が切れた子どもたち 笑。
しかしこの後、怒涛の働きっぷりを見せる。よくがんばりました。
そしてうれしいことがもうひとつ。
この日の同じ時間に、今年から一緒に体育をしているハリマ先生の授業があった。
ゴミを拾おうか、授業に行こうか、少し迷ったけれど、遠くから手を振って、あいさつだけして、ちょっとだけ様子を見ることにした。いつもは準備体操をした後に、「さぁ、何しようねー。」だったので、どうするのだろうと思い、こっそりと見ていた。
準備体操が終わった。子どもたちの動きがとまる。動きはない。でもその後、しばらするとテランにタイヤが並び、順番に子どもたちが跳び始めた。「おおーーっ!」と心の中で何かが踊ったようにうれしい瞬間だった。その後、ペットボトルと手作りボールでボーリングのような遊びを組み合わせ、子どもたちは走って、跳んで、投げて、喜ぶ。ハリマ先生も走る子どもを一緒になって応援し、一緒に笑っている。
たったそれだけの、何てことないことかもしれないけど、先生が、子どもたちと体育の授業をやっている。この一歩が、この国では簡単ではないことを思い知った去年。でもこの日の出来事は、そんなことがぴゅーっと吹き飛んでしまうくらいうれしくて、気持ちのいい朝だった。
タイヤを跳ぶのも、応援するのも、子どもたちはいつも全力、かっこいいぞー。
現在、ウジダに手作りの絵本が40冊ある。飛び出す仕掛けやおもしろい工夫いっぱいの、日本の高校生が作った絵本。
(→『思いがつまった絵本』)
その絵本たちと、ウジダの小学校に行ってきた。
きっかけはファティマさんという女性の方からだった。現在、教育支局の掲示板(ウジダ2人の力作ダンボール製)に僕らの活動の様子などを掲示させてもらっている。それを見た彼女から、移動図書館の申し込みがあり、絵本のアクティビティを行うことになった。その学校は創設4年目と新しく、各学年2クラスずつの計12クラス。話によると図書館がまだなく、子どもたちが本に触れる機会をできるだけ作りたいとのことだった。
事前の打ち合わせを行い、日程、時間を確認し、「はいよろこんで!」とうれしくこの日を迎えた朝、ある出来事があった。予想はできていたことで、そのことに思わず腹を立てそうになったけど、相方になだめられ「平常心・・・。」と心でつぶやき、無事に学校に絵本を届け、活動を始めることができた。こういうときは切り替えを、そして大人の都合に子どもは関係ない。
このファティマさん、日本で言うPTAの役員さんのような人で、先生ではないのだが、学校に図書館を作りたいという思いがあり、いろいろと動いてるそうだ。もちろん校長先生やそれぞれの先生方との信頼関係もあり、彼女が話すと「じゃあやりましょう。」という具合にすっと垣根がなくなり協力的になる。やっぱりモロッコの人がモロッコのために、っていうのは大きい。
当日はウジダの大学生も3人来てくれ、先生のサポートに入ってくれた。この日は時間とクラスの都合上、スタッフを2グループに分けて2つのクラスで同時進行することになった。こちらのグループにはファティマさん、あちらには相方がいてくれるので、自分はほとんど何もしなくても事が進んでいく。「さて、自分は・・・。」と思いながらも安心して写真を撮ることができ、子どもたちや先生の様子を見ていた。
先生方は感情を込めながら読んでくれたり、「これは何?」などと問いかけながら読んだり、子どもたちが絵本を読んでいるときにこっそり一人で読んでいたり、それぞれ違っておもしろい。
写真の彼は大学生のモハメッド、いつも子どもの目線まで下がり、一緒に、自然に子どもたちと接している。「子どもは好きだよ、こういう機会は子どもたちにとってとても大事だからね。」と後からうれしそうに話してくれた。
今回、ファティマさんや大学生がいてくれたおかげで、こちらの意図がすっと子どもたちや先生に伝わる場面を何度も見た。子どものために何かできないか、と思っているモロッコの大人と出会えたことがうれしくて、またこれからのエネルギーをもらった一日でした。
この男の子、絵本から飛び出るサメの口に頭をつっこんで「食べられる~っ」と
一人ではしゃいでいた。かわいい3年生です。