2011年3月の1週目。モロッコのウジダにある2つの学校で、日本の高校生が作った手作り絵本の読み聞かせが行われた。参加したメンバーは日本から来た6人のG県ボランティアメンバーと愉快なモロッコ人通訳、サポート役として現地で活動するウジダの2人、そしてたくさんのモロッコの子どもたちや先生方。
初日の学校では「とにかくたくさんの人に見てもらいたい。」という校長の思いから、急遽全ての活動が屋外で行われた。読み聞かせ以外にも、日本文化紹介、習字、お絵かき、おりがみ、万華鏡作りなどアクティビティ内容は様々である。何人かの子どもたちは家から準備してきたモロッコの国旗を手に持ち、またある子はモロッコカラーをしたイソギンチャクのような帽子までかぶっている。やる気満々である。
始まりの会で、そんな子どもたちが国家を全力歌った後、みんなの前で絵本の読み聞かせが始まった。人数が多いので、5年生は少し後ろで立って見ていた。そして、自分はいつも体育で元気いっぱいの女の子の様子をずっと見ていた。目の前では日本人が絵本を持って、アラビア語を話している。それを聞き取ろうと、その子は絵本をじ~っと見ている。そして、あるページで絵本からブランコに乗ったおさるさんが飛び出した。その瞬間、目が大きく開き「え~っ!ちょっと!みてみて!」と絵本の方を指差しながら、隣の子に自分の驚きを伝えようとする姿が印象的だった。「絵本から!?何で!?」という声が聞こえてきそうな顔をしていた。
アクティビティに入ると、当然のことながら子どもたちのわくわく度はさらに増してくる。テーブルの上で仲間が何か作っている姿を見た瞬間から、わくわく度は120%を超え、言われた通りの順番で静かに待っておく、などという状態とは真逆の姿でテーブルのまわりに大集合。「ぼくやる!ぼくぼく!」「わたしよ!」「おねがい!」「一回だけ!」・・・「さがれ~っ!!」と先生。アクティビティ用のテーブルのまわりは大変である。それほど子どもたちは興味をもち、喜んでいた。習字や折り紙、お絵描きなど、時間や子どもの実態を見ながらその場で柔軟に対応しなければならないことが多々ある。しかしさすがである。ボランティアのメンバーはチームとして動き、それぞれの活動を確実に行っていた。
きっと生まれて初めて書いた習字を見せてきて、ちょっと恥ずかしそうににこっとしていた女の子とか、モロッコのきれいなモザイクがどんどん生まれる万華鏡をいつまでも見ていた男の子とか、その子たちにとって、きっと大きな思い出なるんだろうなぁと思いながら子どもたちのうれしそうな顔を見ていた。
そんな大変な1日目の活動を終えた日の晩、キャプテンに今日の様子について聞いてみた。
「相手側の要望にはできるだけ応えたい。それであんなにわいわいなっても、何か作ったとか触ったとか、子どもたちが少しでもそういう感覚をもつことが大事。」
その言葉に活動に対する熱い思いを感じ、何だか”ぐっ”ときた。